ダイオウグソクムシの「絶食」の謎解明へ 〜胃の中の酵母菌がエネルギーを作っていたのでは〜


5年にわたって食べずに生きてきたダイオウグソクムシの秘密は、胃の中に住んでいた酵母菌が栄養を作っていたためである可能性がでてきました。解明されるのが楽しみです。近頃、細菌やバクテリアが様々な不思議現象を起こしている情報を見聞きします。私たちの周りに充ち満ちている生命の働きに気づいて、上手な共生関係を創って行けたらとても面白いことが起こりそうです。

グソクムシは「断食」でしたが、野菜やお米、果物の「無肥料栽培」はこれからの農業のキーワードだと思います。化学肥料→有機肥料→無肥料(無施肥/細菌との共生を育む)という時代の流れになっています。

化学肥料や有機肥料は野菜にとって最適なバランスになっておらず、過剰な栄養、余った栄養によって野菜が不健康になってしまうこともあるようです。そのために野菜が病気になったり害虫が発生したりして薬(農薬)が必要になるようです。
人間が病気になる原因は、体質に合わない食品の摂取、食べ過ぎ、添加物など「食べ物」である割合が極めて大きいそうです。化学肥料や不健康な有機栽培で育った不健康な野菜を食べることによって病気を身体に取り込んで、病気を引き起こしている可能性もあるのではないでしょうか。

無肥料(無施肥)栽培では、土の中の微生物の活動を活発にする土作りを行うことによって、微生物たちに栽培する野菜や果物の栄養を供給して貰おうというアプローチです。健康な土を創って健康な野菜を育てる。とてもいい感じがします。

ところで無肥料とフリーエネルギー、なんだか似通ったところがあって、キーワードは「愛」みたいです。

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グソクムシの胃から液体 「絶食」の謎解明に期待

転載元)NHK 2014/3/15
 

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三重県鳥羽市の水族館で、5年以上餌を食べず絶食を続ける生き物として人気を集め、先月に死んだ、 深海のダンゴムシの仲間「ダイオウグソクムシ」の胃の中から、酵母菌を含んだ液体が見つかり、水族館では、絶食しながら生き続ける謎を解明する鍵になるの でないかとみて、研究を進めることにしています。

「ダイオウグソクムシ」はメキシコ湾などの深海600メートルから700メートルに生息するダンゴムシの仲間で、鳥羽市の鳥羽水族館では、飼育していた9匹のうち1匹が5年余り前から餌を食べなくなり、絶食を続ける生き物として人気を集めていました。
この1匹は先月、死んでいるのが確認され、水族館で解剖して詳しく調べたところ、酵母菌を含んだ褐色の液体が胃の中を満たしていたということです。
水族館で過去に死んだほかのグソクムシからはこうした液体は見つからなかったということで、水族館では、長期間にわたって絶食しながら生き続ける謎を解明する鍵になるのでないかとみて、研究を進めることにしています。
飼育員の森滝丈也さんは「どのような種類の菌なのか、胃の中でどんな作用が働いていたのか、より詳しく調べたい。グソクムシを飼育しているほかの水族館とも協力して、食べない謎を解明していきたい」と話しています。

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絶食ダイオウグソクムシ、死因は「餓死」ではなかった…胃に謎の液体

転載元)産経新聞 2014/3/13

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鳥羽水族館で飼育中のダイオウグソクムシ。
No.1の死でさらに謎が深まった=鳥羽市(写真:産経新聞)

 鳥羽水族館(三重県鳥羽市)で飼育され、5年以上の絶食記録を残して2月に死んだ深海生物「ダイオウグソクムシ」。その不思議な生命体の解明へ関心が高 まっている。水族館が死後まもなく解剖したところ、体内から正体不明の液体を検出。液体からは菌も発見され、食べなくても生きていける、長寿に関係した “夢の酵母”の可能性も指摘されている。グロテクスだが人気を集めたダイオウグソクムシ。謎の解明はどこまで進むか-。

◆6年余、ほぼ成長せず

 1月初めに絶食6年目に入ったとして話題を呼んだダイオウグソウムシ「No.1」だが、2月14日午後5時半ごろ、展示水槽で死んでいるのを飼育員の森 滝丈也さん(44)らが確認した。森滝さんはこの日朝の観察で体が弱っているように感じたといい、「とうとうその日が来たな」と死を冷静に受け止めた。

 水族館での飼育日数は2350日(6年と158日)、平成21年1月2日に50グラムのアジを食べて以降、絶食日数は1869日(5年と43日)に達していた。

 メキシコ湾の海底約800メートルで捕獲し19年9月にダイオウグソクムシの第一号として入館し、「No.1」と命名された。当時の体長は29センチ、体重は1040グラム。死亡時の体長は入館時と変化なく、体重も1060グラムと大きな差はなかった。

 年齢を計る方法は未解明だが、生殖に関係する器官がないため成熟した個体ではないとみられる。入館以来6年5カ月を生き続けたが、その間の絶食が5年余りに及んだのは、水族館にとっても驚異的なことだった。

◆解剖!体内から見たことない液体が

 食べなくても長期間生きた生態を本格的に解明しようと、森滝さんが死後まもなく解剖したところ、これまた驚くべきことが分かった。まず目を見張ったのは メスで開いた胃の内部。見たこともない淡褐色の液体で満たされていた。過去に死亡したダイオウグソクムシの個体からは未消化の固形物が残っているか、胃が 空っぽの状態だったが、このような液体を見たのは初めてだった。

 液体は約130ccと胃を埋め尽くすほどの量があり、ダイオウグソクムシ特有の生臭い腐臭がした。液体以外に固形物はなかった。

 さらに光学顕微鏡で液体をのぞくと、中に長さ10ミクロン(100分の1ミリ)ほどの菌類が見つかった。株分かれしている様子も見られ、1日後には株がさらに増殖していた。出芽や分裂で増える単細胞の酵母に近い存在と推定している。

 こうした菌類は酵母様真菌(こうぼようしんきん)と呼ばれ、土の中など自然界にあるほか、小動物の消化器官に存在するものが知られ、下痢を繰り返した犬 などの体内から検出されるケースがある。酵母は、パン酵母やビール酵母など糖分を分解してアルコールなどに変えることで知られる。

 そこで、No.1の酵母様真菌と長期間の絶食の関連が焦点となった。酵母と長寿の関係は、さまざまな研究が続いている。静岡県三島市の国立遺伝学研究所 の研究チームが、昨年8月に長寿遺伝子の働きを解明して酵母菌の寿命を操作する実験に成功。酵母と長寿遺伝子の関連が分かり注目された。

◆食べずに生きられる?

 果たして、No.1の液体から検出された酵母様真菌は、食べないという状態にもかかわらず、空腹感を忘れさせ生きながらえる作用をもたらす存在なのか。大きな仮説が生まれた。

 一方、No.1の消化管全体に炎症や変色はなく、過去に解剖した個体よりも状態がよかった。甲羅の裏側などの肉も痩(や)せているように見えなかった。 捕食している個体と同様に長期間の絶食を経たとは思えないような健全さをうかがわせた。こうした状態から、森滝さんは「直接の死因はわからないが、餓死し たという状況ではない」と判断。不老要素が酵母様真菌に含まれている可能性も浮上した。

 真菌について森滝さんは「初めて見るもので、まったく正体が分からない」と話す。ただ寿命との関係よりもまず、絶食との関わりあいに注目し、「体内でどのように作用していたのか」を解明したいという。

 No.1から採取した消化管内部の液体は、健康診断で採取した血液などを分析する三重県伊勢市内の臨床検査センターにも送り検査した。その絶食の偉業が長寿と関係するなど、大きな発見につながる可能性も期待されたが、結局、検査で液体の正体は分からなかった。

 ダイオウグソクムシは約10年前に「変な生き物」ブームで脚光を浴びるまで見向きもされなかった。この生物に関する論文は海外に数件しかなく、いずれも何を食べたかという胃の内容物などを記しているだけで生態の詳しい研究は進んでいない。

◆他のダイオウグソクムシも絶食

 ただ同水族館ではNo.1以外のダイオウグソクムシでも絶食が観察されており、No.5という個体は絶食期間1年3カ月で、No.1に代わって現在記録を持つ。このことから、一般的にダイオウグソクムシは絶食に強いとみられる。

 神奈川県藤沢市の新江ノ島水族館では、No.1とほぼ同時期の19年からダイオウグソクムシの飼育を始め、現在は7個体に3カ月に1度の割合でサンマや イワシなどを与えている。飼育員の北嶋円さん(32)は「もともと食が細い生き物という知識の中で、分からないことが多い。限られた餌を与えているので、 これまでに死んだ6個体はいずれも解剖までして調べることはなかった」と話す。

 深海生物学を専門とする北里大海洋生命科学部の三宅裕志講師(44)は「No.1の体内の液体が、ヒトの腸内細菌のように共生関係にあることも考えられ る。逆にその液体が原因で死んだのかもしれない。ダイオウグソクムシに関する資料はまだまだ少なく、もっとデータを集める必要がある」と指摘する。

 No.1の絶食には、ネットをはじめとして大きな関心が集まった。これをきっかけに、ダイオウグソクムシの研究が盛んになれば、人の生活や健康に結びつく大きな成果が生まれるかもしれない。