第10回 五行穴

 中医学では、五行穴とよばれる特別なツボがあります。今回の東洋医学セミナーダイジェストでは五行穴についての新しい理論を取り上げます。



1.五行穴

 手足の各経脈線上に「五行穴(ごぎょうけつ)」と呼ばれるツボがあります。五行穴は指先から順番に、井穴(せいけつ)、榮穴(えいけつ)、兪穴(ゆけつ)、経穴(けいけつ)、合穴(ごうけつ)と呼ばれます。
 各経脈の五行穴の位置と名称を下図に示します。

大腸経脈の五行穴
1. 商陽[しょうよう:井]
2. 二間[じかん:榮]
3. 三間[さんかん:兪]
4. 陽谿[ようけい:経]
5. 曲池[きょくち:合]

三焦経の五行穴
1. 関衝[かんしょう:井]
2. 液門[えきもん:榮]
3. 中渚[ちゅうしょ:兪]
4. 支溝[しこう:経]
5. 天井[てんせい:合]

小腸経の五行穴
1. 少沢[しょうたく:井]
2. 前谷[ぜんこく:榮]
3. 後谿[こうけい:兪]
4. 陽谷[ようこく:経]
5. 小海[しょうかい:合]
肺経脈の五行穴
1. 少商[しょうしょう:井]
2. 魚際[ぎょさい:榮]
3. 太淵[たいえん:兪]
4. 経渠[けいきょ:経]
5. 尺沢[しゃくたく:合]

心包経脈の五行穴
1. 中衝[ちゅうしょう:井]
2. 労宮[ろうきゅう:榮]
3. 大陵[だいりょう:兪]
4. 間使[かんし:経]
5. 曲沢[きょくたく:合]

心経脈の五行穴
1. 少衝[しょうしょう:井]
2. 少府[しょうふ:榮]
3. 神門[しんもん:兪]
4. 霊道[れいどう:経]
5. 少海[しょうかい:合]
胃経脈の五行穴
1. れい兌[れいだ:井]
2. 内庭[ないてい:榮]
3. 陥谷[かんこく:兪]
4. 解谿[かいけい:経]
5. 足の三里[あしのさんり:合]

胆経脈の五行穴
1. 足の竅陰[あしのきょういん:井]
2. 侠谿[きょうけい:榮]
3. 足の臨泣[あしのりんきゅう:兪]
4. 陽輔[ようほ:経]
5. 陽陵泉[ようりょうせん:合]

膀胱経脈の五行穴
1. 至陰[しいん:井]
2. 足の通谷[あしのつうこく:榮]
3. 束骨[そくこつ:兪]
4. 崑崙[こんろん:経]
5. 委中[いちゅう:合]
脾経脈の五行穴
1. 隠白[いんぱく:井]
2. 大都[だいと:榮]
3. 太白[たいはく:兪]
4. 商丘[しょうきゅう:経]
5. 陰陵泉[いんりょうせん:合]

肝経脈の五行穴
1. 大敦[だいとん:井]
2. 行間[こうかん:榮]
3. 太衝[たいしょう:兪]
4. 中封[ちゅうほう:経]
5. 曲泉[きょくせん:合]

腎経脈の五行穴
1. 湧泉[ゆうせん:井]
2. 然谷[ねんこく:榮]
3. 太谿[たいけい:兪]
4. 復溜[ふくりゅう:経]
5. 陰谷[いんこく:合]



2.定位法

 定位法とはツボの位置を特定する方法のことであす。定位法には、1)骨度法と、2)同身寸法があります。

1)骨度法

 身体の寸法には個人差があるので、人によって経脈の長さが異なり、経穴も厳密には各人によって違いがあります。従って、経穴の位置に関して、身体上のある基準位置から何寸といった寸度では、その人にとって正確にはなり得ません。
 骨度はその字のとおり、骨格を基準として個人の寸度を定めたものです。例えば、腕にある経穴の場合、肘の突端から手関節横紋までを1尺(10寸)と決め、その間を十等分した寸法を元に、経穴の位置を特定します。
 骨度法の原典は「霊枢」骨度篇です。

2)同身寸法

 骨度法で寸度を計ると、一人一人の長さをいちいち測って当てはめることになります。もちろんこれが一番正確な方法ですが、繁雑であることは否めません。そこで、簡便法とでもいうか、その人の身体のある部分を長さを尺度として用いることが考え出されまし。それが同身寸法です。

 1寸:手の母指第1節の横幅(a)
 2寸:手の示指、中指、薬指の第1節を合わせた幅(b)
 3寸:手の示指から小指までの中節を合わせた幅(c)

 手の母指と中指の指頭をあわせて環を作ったとき、
 
 1寸  :中指の内側にできる横紋の端を結ぶ間(d)
 1寸5分:中指指関節の関節の背側間(d)




3.五行穴の取穴法

 同身寸法を用いる簡易的な取穴法を下表に示します。
(表の執筆:椿眞美氏、鍼灸木春堂・福岡市中央区)


【手陽経】
経脈
五行穴
穴の位置
小腸
少沢
小指の爪の付け根、外側の際小指の爪の付け根、外側の際
前谷
胃小指の付け根の外側、拳を握った時にできるシワの先端(第3関節の爪側)
後谿
脾小指の付け根の外側、拳を握った時に出る第3関節の手首側
陽谷
胃手の甲側、手首の横シワの小指側、丸い骨の爪側の凹み
小海
胃肘を90度くらいに曲げた時、肘頭横にできる凹みの小指側
三焦
関衝 薬指の爪の付け根、小指側の際
液門 手の甲側、拳を握った時にできる薬指と小指の第3関節間の爪側
中渚 手の甲側、拳を握った時にできる薬指と小指の第3関節間の手首側の凹み
支溝 手の甲側、手首の横シワの中央から肘に向かって同身寸法(c)の指4本分上がった所
天井 肘を曲げ、肘頭から同身寸法(a)の親指1本分肩側へ上った凹み
大腸
商陽 人指し指の爪の付け根、親指側の際
二間 人指し指の親指側、人指し指を曲げた時にできる指の第3関節の爪側の凹み
三間 人指し指の親指側、人指し指を曲げた時にできる指の第3関節の手首側の凹み
陽谿 手の甲側、手首の横シワの親指側、親指をそらした時にできる凹み
曲池 手を胸に当てできる肘の横シワの線上で、親指側にある凹み

【手陰経】
経脈
五行穴
穴の位置
少商 親指の爪の付け根、外側の際
魚際 甲側と掌側の境目、親指の付け根のふくらんだ所
太淵 手のひら側、手首の横シワの親指側、親指の付け根の拍動を感じる所
経渠 太淵から肘側に同身寸法(a)の親指1本上がった所
尺沢 腕の手のひら側、肘を胸の方へ曲げた時にできる肘の親指側のシワの先端から親指1本分入った所
心包
中衝 中指の爪の付け根、親指側の際
労宮 手のひらのほぼ中央の凹み、指を曲げて中指と薬指の先端が当たる所の中間
大陵 手のひら側、手首の横シワのほぼ中央、太い2本のスジの間
間使 大陵から肘の方へ向かって同身寸法(c)の指4本幅上がった所
曲沢 肘を曲げた時にできる肘のシワの手のひら側、軽く肘を曲げたら分かる太いスジの小指側の凹み
少衝 小指の爪の付け根、親指側の際
少府 手のひら側、指を曲げて薬指と小指の先端が手のひらに当たる所の中間
神門 手のひら側、手首の横シワの小指側、シワの端からやや内側の太いスジの所
霊道 神門から肘側へ同身寸法(c)の指幅の半分上った所
少海 肘を曲げた時にできる肘のシワの手のひら側で小指側の端、肘の骨よりやや親指より

【足陽経】
経脈
五行穴
穴の位置
膀胱
至陰 足の小指の爪の付け根、外側の際
足の通谷 足の小指の付け根の関節の爪側で外側
束骨 足の小指の付け根の関節の足首側で外側
崑崙 外くるぶしとアキレス腱の付け根のちょうど真ん中にある凹み
委中 膝裏の太い横シワの中央
足の竅陰 足の薬指の爪の付け根、小指側の際
侠谿 足の薬指の付け根の関節の爪側で、小指側の凹み
足の臨泣 足の甲側、足の薬指と小指の間で、骨が交わるところの凹み
陽輔 外くるぶしの上、同身寸法(b)を2回、指6本幅上った所からすね前面側へ同身寸法(a)の1/3の所
陽陵泉 膝を曲げ、膝下のグリグリした骨の真下
れい兌 足の人指し指の爪の付け根、小指側の際
内庭 足の人指し指の付け根の関節の爪側で小指側
陥谷 足の人指し指の付け根の関節の足首側で小指側
解谿 足首を上に曲げた時にできるシワの前面中央、太いスジの真ん中
足の三里 膝下から同身寸法(c)の指4本下。向こうずねのすぐ外側

【足陰経】
経脈
五行穴
穴の位置
湧泉 足の裏、土踏まずの上の中央、足指を曲げた時にできる人文字の凹みの中央
然谷 内くるぶしの前下方、丸い骨の下際の凹み
太谿 内くるぶしの後ろ、アキレス腱脇の凹みの血流の拍動を感じる所
復溜 太谿から同身寸法(b)の指3本分上、アキレス腱の前際
陰谷 膝を軽く曲げ、膝の裏の横シワの親指側端でスジの際(やや膝裏側)
大敦 足の親指の爪の付け根、小指側の際
行間 足の親指の付け根の関節の爪側で小指側の凹み
太衝 足の甲側、親指と人指し指の接合点の凹み
中封 内くるぶしの前、同身寸法(a)の親指1本幅の所。足首をすね側に軽く曲げるとできる凹み
曲泉 膝裏の横シワの親指側の端で、筋肉の盛り上がりの真ん中の凹み
隠白 足の親指の爪の付け根、内側の際
大都 足の親指の付け根の関節の爪側、内側の凹み
太白 足の親指の付け根の関節の足首側(立って左右の足をそろえた時にくっつく親指の根もと)
商丘 内くるぶしの前下方、内くるぶしとその下の丸い骨の間、スジの上際の凹み
陰陵泉 脚をまっすぐに伸ばし、すねの内側をなぞり上げ、骨の曲がり始めた所



4.五行穴の五行への分類

 五行穴の属する元素を下表に示します。
従来の中医学では、五行穴の五元は、陰経では井穴から順に「木火土金水」、陽経では「金水木火土」であるとされてきました。しかし正確には五行穴の元素は下表のように、井穴から順に「木火土金水」の順に循環しています。この理論を用いれば、同時に複数の経脈の治療をする場合、治療対象のツボをその元素が相生となるように選ぶことができ、効果の高い治療が可能となります。


【男性の五行穴】

経脈
左手足 右手足
井穴 榮穴 兪穴 経穴 合穴 井穴 榮穴 兪穴 経穴 合穴
金△ 水△ 木△ 火△ 土△ 金▽ 水▽ 木▽ 火▽ 土▽
金▽ 水▽ 木▽ 火▽ 土▽ 金△ 水△ 木△ 火△ 土△
土△ 金△ 水△ 木△ 火△ 土▽ 金▽ 水▽ 木▽ 火▽
土▽ 金▽ 水▽ 木▽ 火▽ 土△ 金△ 水△ 木△ 火△
火△ 土△ 金△ 水△ 木△ 火▽ 土▽ 金▽ 水▽ 木▽
火▽ 土▽ 金▽ 水▽ 木▽ 火△ 土△ 金△ 水△ 木△
水△ 木△ 火△ 土△ 金△ 水▽ 木▽ 火▽ 土▽ 金▽
水▽ 木▽ 火▽ 土▽ 金▽ 水△ 木△ 火△ 土△ 金△
(火)△ (土)△ (金)△ (水)△ (木)△ (火)▽ (土)▽ (金)▽ (水)▽ (木)▽
(火)▽ (土)▽ (金)▽ (水)▽ (木)▽ (火)△ (土)△ (金)△ (水)△ (木)△
木△ 火△ 土△ 金△ 水△ 木▽ 火▽ 土▽ 金▽ 水▽
木▽ 火▽ 土▽ 金▽ 水▽ 木△ 火△ 土△ 金△ 水△
 

【女性の五行穴】

経脈
左手足 右手足
井穴 榮穴 兪穴 経穴 合穴 井穴 榮穴 兪穴 経穴 合穴
金▽ 水▽ 木▽ 火▽ 土▽ 金△ 水△ 木△ 火△ 土△
金△ 水△ 木△ 火△ 土△ 金▽ 水▽ 木▽ 火▽ 土▽
土▽ 金▽ 水▽ 木▽ 火▽ 土△ 金△ 水△ 木△ 火△
土△ 金△ 水△ 木△ 火△ 土▽ 金▽ 水▽ 木▽ 火▽
火▽ 土▽ 金▽ 水▽ 木▽ 火△ 土△ 金△ 水△ 木△
火△ 土△ 金△ 水△ 木△ 火▽ 土▽ 金▽ 水▽ 木▽
水▽ 木▽ 火▽ 土▽ 金▽ 水△ 木△ 火△ 土△ 金△
水△ 木△ 火△ 土△ 金△ 水▽ 木▽ 火▽ 土▽ 金▽
(火)▽ (土)▽ (金)▽ (水)▽ (木)▽ (火)△ (土)△ (金)△ (水)△ (木)△
(火)△ (土)△ (金)△ (水)△ (木)△ (火)▽ (土)▽ (金)▽ (水)▽ (木)▽
木▽ 火▽ 土▽ 金▽ 水▽ 木△ 火△ 土△ 金△ 水△
木△ 火△ 土△ 金△ 水△ 木▽ 火▽ 土▽ 金▽ 水▽


5.五行穴の用法(2経の同時治療)

 2つの経脈を同時に治療したい場合、次の手順に従って五行穴を選びます。

1)主経脈と副経脈を定める。
2)主経脈は井穴を選ぶ。副経脈の経穴は、相生の法則によって主経脈の井穴を生かす五行穴を選ぶ。
3)2)で選んだ2つの経穴に対して、極性を合わせて磁石または金粒銀粒シールを貼る。


例)男性、左手心経脈[主経脈]と、左足脾経脈[副経脈]の場合

・主経脈である男性の左手心経脈の井穴・少衝は火△。
・火△を生かすのは、同極性の木△または異極性の水▽。
・副経脈である男性の左足脾経脈の五行穴は全て陰極。
・従って、水▽となる経穴を脾経脈の五行穴から選ぶと、兪穴・太白。
・左手の少衝にS極、左足の太白にN極の磁石を貼る。